コンビニやファストフード店で買ったお弁当は、家に帰るまでに冷めてしまうことがよくあります。そんな時、電子レンジで温め直すのが便利ですが、使えない容器があるのはご存知でしょうか。
例えば、卵の殻やアルミホイル、そして発泡スチロールなどです。
特にテイクアウトの容器をそのまま電子レンジに入れると、「焦げた」「形が変わった」という問題が起こりがちです。
発泡スチロールは高温に弱く、電子レンジで加熱すると、中の食品が熱くなることで溶けたり形が変わったりすることがあります。
この記事では、電子レンジで加熱する際に気をつけたい素材、特に発泡スチロールの扱い方について解説しています。
電子レンジで発泡スチロールを使う際の注意点
電子レンジの加熱メカニズム
電子レンジは、2.45GHzの電磁波を使って食品に含まれる水分子を振動させ、その摩擦熱で食品を温めます。
この原理から、水分を含まない物質、例えば発泡スチロールは、電子レンジの影響を直接受けません。
しかし、中の食品が温まると、間接的に影響を受ける可能性があります。そのため、水分を含む容器は電子レンジでの加熱に向いていないと言えます。
発泡スチロールの性質と使用上の注意
発泡スチロールは、石油を基にしたプラスチックの一種で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの多様なプラスチックの中の一つです。
通常の発泡スチロールはポリスチレンを基にしており、小さいビーズを発泡剤で約50倍に膨らませて製造されます。
この素材は、ほぼ空気でできており(約98%)、原料はたった2%しか使われていません。断熱性や軽量さが特徴で、再利用も可能です。
しかし、耐熱温度が約80~90℃と限られているため、電子レンジで加熱された食品がこの温度を超えると発泡スチロールは変形する恐れがあります。
電子レンジと発泡スチロールの相性について
発泡スチロールの加熱反応
発泡スチロールは、80~90℃が耐熱限界です。この限界を超えると、発泡スチロールは溶けるのではなく、縮小して変形したり穴が開いたりする現象が起こります。これにより、発泡スチロールから成分が溶け出して食品に混入することはありません。例えば、カップラーメンでは沸騰したお湯を使いますが、これらのカップは通常の発泡スチロールとは異なり、耐熱性の高いプラスチックでコーティングされています。
発泡スチロールカップの耐熱コーティング
一般的に使われる発泡スチロールは主にポリスチレンですが、カップラーメンなどの製品ではポリエチレンやポリプロピレンで表面処理されています。ポリエチレンの融点は約110℃、ポリプロピレンは約160℃で、沸騰したお湯を使用しても溶ける心配はありません。特にポリプロピレンでコーティングされたカップは、電子レンジでの加熱にも耐えることができます。使用する際には、容器に記載されている「プラマーク」を確認し、「PP」と書かれたものを選ぶと安心です。
発泡スチロールの健康への影響とマイクロプラスチックの問題
発泡スチロールが溶けて食品に混ざることは基本的にはありません。万が一発泡スチロールの小片を誤って飲み込んでも、消化されることはなく、自然に体を通過して、最終的には便として排出されます。しかし、私たちが意識せずに摂取している可能性があるのは、マイクロプラスチックという非常に小さなプラスチック粒子です。
マイクロプラスチックは、例えば食品のトレーや包装に使われる発泡スチロールのように見えない形で私たちの周囲に存在しています。これらの微細なプラスチックは、海などの自然環境に入ると、環境に悪影響を及ぼし、動植物に摂取されることがあります。自然に分解されにくいプラスチックは、長期間にわたり環境に残り、海洋生物がこれを食物と誤認して食べることで、年間多数の生物が命を落としています。5mm以下のマイクロプラスチックは、毒性物質を吸着しやすい性質を持ち、食物連鎖を通じて生態系や私たちの体内にも蓄積される恐れがあるのです。プラスチックごみの適切な処理やリサイクルが、この問題を少しでも改善する手助けになるでしょう。
電子レンジで溶けた発泡スチロールのお手入れ方法
電子レンジで発泡スチロールが溶けてしまった場合、その掃除方法には発泡スチロールの特性を活用したいくつかのアプローチがあります。
温水を使ったクリーニング
発泡スチロールは80~90℃で柔らかくなる性質を持っています。この特性を利用して、温水を使って溶けた発泡スチロールをやわらかくし、取り除くことができます。ただし、温度が高い水を使う際は火傷に注意が必要です。割り箸に布を巻きつけたり、ブラシを使ったりして慎重に作業しましょう。また、重曹はプラスチックを溶かす力はないものの、食品の汚れをきれいにするのに役立ちます。
柑橘系洗剤の使用
柑橘類の皮に含まれるリモネンは、発泡スチロールの主成分であるポリスチレンと似た化学構造を持っています。このため、リモネンを含む柑橘系洗剤を使うと、発泡スチロールを溶かすことが可能です。ただし、洗剤に含まれるリモネンの量によって効果には差があります。
アセトンを使用した方法
前述したように、発泡スチロールの約98%は空気です。アセトンを使うと、この空気を取り出し発泡スチロールを溶かすことができます。アセトンはネイルリムーバーに含まれる成分でもありますが、使用時には有害な気体が発生する可能性があるため、換気の良い場所で行うことが大切です。また、アセトン以外にトルエンやベンゼンなどのシンナー類を使うこともできますが、どの方法も安全に注意しながら行いましょう。
電子レンジ使用時に避けるべき素材とその理由
電子レンジは、食品中の水分子を振動させて温める装置です。水分を含む素材や電磁波を反射する金属製の素材は、電子レンジでの加熱に向きません。また、発泡スチロールは水分を含まないものの、中の食品が耐熱温度を超えると変形の危険があるため、基本的に電子レンジ使用は避けるべきです。しかし、「PP」のプラマークがあるポリプロピレンでコーティングされた製品なら、レンジで加熱可能です。
電子レンジで加熱してはいけない素材
- 紙製の容器や袋:一部ポリエチレンでコーティングされているものもありますが、紙製品は基本的に電子レンジ使用不適切です。
- 木製の器:水分を吸収しやすく、火災のリスクがあります。
- プラスチック製の容器、ペットボトル、ラップ:高温による変形や破裂の恐れがあります。
- 金属製の容器、アルミホイル、金属装飾があるもの:電磁波を反射し、電子レンジを故障させる可能性があります。
電子レンジで加熱できる素材
- 耐熱ガラス製の容器
- 陶磁器:金属装飾のないもの
- レンジ対応マークのあるシリコン製品や特定のプラスチック容器
- クッキングシート(耐油紙)
プラスチック製品では「レンジOK」や耐熱温度140℃以上の表示があるものが安全です。プラスチックの種類によっては、電子レンジで食品を加熱する際にその融点を超えることがありますので、表示を確認して使用してください。
まとめ
発泡スチロールは98%が空気で、残り2%が石油由来のプラスチックから成り立っています。電子レンジで加熱されることはないものの、中身の食品が高温になると変形する恐れがあります。電子レンジで加熱すべきでない素材には、水分を含むもの、金属を含むもの、密閉された容器、耐熱温度140度未満の素材があります。使用時にはこれらの点に注意しましょう。